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【コラム】コツコツの先にあるワクワク。リーグワンが待ち遠しい。

 多くのラグビーファンが2025-26シーズンのクライマックスを待っている時、このチームは2026-27シーズンの開幕が待ち遠しい。選手も、その活躍を見守る人たちも、新しい舞台が楽しみで仕方ない。

 

 AZ-COM丸和MOMOTARO’Sのチーム名が、次のシーズンからNTT ジャパンラグビー リーグワンのディビジョン3に加えられる。

 同リーグへの新規参入へ正式に手を挙げたのが20257月。その後同年11月、リーグの新規参入審査委員会に参入審査基準充足見込みとされた。

 あとは勝ち切るだけ。

 チームと選手はそう気持ちを高め、2025126日に東京ガス ブルーフレイムスを32-10と下してトップイーストリーグAグループを制す。続く全国社会人ラグビーフットボールトーナメント大会でも頂点に立った(2026124日)。

 

(トップイーストリーグAグループ決勝:2025年126日東京ガス ブルーフレイムス戦)

(全国社会人ラグビーフットボールトーナメント大会決勝:2026124日東京ガス ブルーフレイムス戦)

 当初の予定では、その日から1週間以内にリーグワン参入が決まるはずだったが、ホストエリアとホストスタジアムの最終決定に時間を要して正式に新規参入チームとして承認されたのは2026317日。予定より長く待っただけに、吉報が届いた時の喜びは大きかった。

 2017年の春にチームに加わり、2年目から主将。長くチームの先頭に立ってきた眞野拓也は、悶々として過ごした時間を「気が気ではなかった、というのが本音でした。(選手としては)やれることはやったつもりでしたが、いつ決まるんだろう……っていう不安はありました」と正直に吐露する。

(眞野拓也主将)

 しかし、最終的にハードルをクリアしたいま、主将の表情も崩れる。千葉県柏市にあるクラブハウスにも活気がある。

 やれることはやった。

 そう言い切れることは、人生の中でそう多くはない。しかし眞野主将が迷いなくそう言えるのは、残した結果が根拠ではない。チームの質が以前とは大きく変わっているからだ。

 自身が京産大4年時に進路を決めた時、チームは関東社会人1部にいた。入社後の最初のシーズンはトップイーストリーグのディビジョン2。そこで5位に終わる。当時の国内最高峰リーグはトップリーグ。その背中は遠いどころか、まったく見えていなかった。

 当時、ラグビー部ができて日が浅かった。大学時代の恩師、大西健監督に「お前が強くしてこい」と言われて決心はしたけれど、見通しは明るくなかった。

 そんな状況からディビジョン3とはいえ、2022年に再編されて発足した国内最高峰リーグ、リーグワンに加われたのは、山を登るように一歩一歩高みへ向かったからだ。急いだり、近道を選ぶことはなかった。

 眞野主将の入社当時の記憶は「めちゃくちゃきつかったです」。仕事はフルタイムで、ラグビーに多くの時間を割けるのは土日だけ。それなのに、メンバーが集まらないこともあった。

「チームを強くしていくと聞いていたのに、最初はすごくギャップがありました。これじゃあ難しいぞ、と思いました」

 そんな中でモチベーションを失わなかったのは、同じ意志を持った仲間たちの存在があったからだ。

「先輩も同期も、ラグビーが好きな方が多かったんです。ポテンシャルがある方もいっぱいいました」

 みんなの力と個性を主将として束ねたら、チームが少しずつ前進し始めた時の喜びを覚えている。

 チームが戦うステージを毎シーズンのように高めていったら、「会社も体制を整えていってくれました。結果を出せば会社もいろいろバックアップしてくれるんだ、と体感できました」。それが選手たちのエナジーとなった。

 練習機会を確保できる体制が整っていく。グラウンドやクラブハウスの整備が進む。

「毎年結果を出して、昇格し、自分たちがラグビーをできる環境を作っていこう。そんな思いを強く持てるようになっていったことが、(下部リーグからの長い道のりの中で活動を)継続できた要因かな、と思います」

 主将より1年先にチームに加わった中に、白川総哲がいる。東海大OBのロックも、同じ道を歩き、似たような感覚を得てきた。後輩の主将を「環境が整っていない中で入ってきたので、苦しいこともあったと思います。そんな時期も含めてキャプテンをやってきてくれて尊敬しています」

(眞野主将、AZ-COM丸和ホールディングス株式会社 和佐見勝代表取締役社長、白川選手

 河川敷のグラウンドで、ともに泥にまみれた時期が懐かしい。練習を終えて飲みに行き、ああでもないこうでもないと、いろんなことを話した。その時間も、チームの土台を強固にする一部となっているのは間違いないだろう。

 

 白川と同じタイミングでチームに加わった選手は30人前後いた。その中で、いまも在籍しているのは浅野太一だけだ。戦うステージを上げていくのに、外からの実績のある選手や外国人選手が増えているのも事実だ。

(浅野太一選手)

 それによって白川自身、2025-26シーズンの試合出場は1試合だけに終わる。しかし32歳のセカンドローは、その状況にも「チームが強くなるためには新しい風というか、新戦力が必要だと思います。実力の世界だと思うので、それはしっかり受け止めるというか、勝つためにはやはりうまい人、強い人に加わってもらわないといけない」。

 (2025年11月8日日立サンネクサス茨城戦:白川選手)

 もちろん、ポジションを争う気持ちは失わない。実績のある選手たちから刺激をもらい、もっと自分を高める意欲もある。それでも試合に出られないなら、自分から探してでも、チームを支えられる自分の持ち場を見つける。その上で、「このチームの歴史を知っている者だからできることがある」と思う。

 

「環境は、自分たちで掴み取っていけるということを知りました。勝って会社から信頼を得て、期待してもらえる」

 それは、リーグワン参入が実現した今後も続く。さらに結果を残し続ければ、周囲のサポートも大きくなるだろう。チームも自分も、ディビジョン3に入ることがゴールとは思っていないのだから、前へ進むスピードを緩めてはいけない。簡単ではないけれど、登っている山の頂上は高いところにある。

 

 ただ、結果を残し続けることは簡単ではない。そんな時こそ、人の目が注がれるのを忘れてはいけない。

「信頼を積み重ねるのは難しいですけど、信用を崩すのは一瞬だってことも伝えないといけないと思っています」

 だから白川は、試合に出られなくても全力で準備に力を注ぐことをやめない。

 

 眞野主将が「やれることはやった」と言い切れるのは、MOMOTARO’Sがリーグワンにふさわしいチームになった自信があるからだ。

 白川の話すことは、チーム全員の総意でもある。結果を残し続けてここまで来られた。それには近年加わってくれた実績ある選手たちの存在が不可欠ではあったが、その選手たちの試合でのパフォーマンスだけがチームを引き上げたわけではない。

 トップ選手たちの普段からの姿勢、プレー、言動に影響を受けた以前から在籍する選手たちのマインドセットが変わったからMOMOTARO’Sはチーム力を高めた。

 

 眞野主将は、チームが階段を昇り続けられているのは、試合の時のピッチ上のパフォーマンスが変わっただけではないと思っている。その大前提に、チーム全員で過ごす日常が変わったから残す足跡が大きくなった。試合メンバーに生え抜きメンバーが多いのも、その証拠だろう。

 

 キャプテンはリーグワン参入が決まってから、ディビジョン3の試合を見る目が変わったと言う。来季戦う相手だ。どう勝ってやろう。そんな目で試合を見つめる。

「どういう攻め方しているかとか、ディフェンスにどんな特徴があるかなど、そういう戦術的なところを気にしながら見たりしています」

 新しい自分たちの戦う場を思い浮かべると身が引き締まる。

「これまでは社員の方にもそうでしたが、試合を観に来てくださいと呼びかけて来てもらっていました。そこはこれからも変わらないのですが、リーグワンのチームとしては、お金を払ってでも観たいと思ってもらうチームにならないといけないと思っています」

 細谷直GM兼監督は、今後も、これまで貫いてきた、外国出身選手や移籍選手に頼らないチーム作りを継続していきたいと言う。

(細谷GM兼監督)

 新しい風は必要だ。しかし、結果的に生え抜きの選手が中心選手となっているシーズンをこの先も実現させたい。選手たちの頑張りに敬意を払い、それこそが持続的な強化であり、チームが確実に力を積み上げていく道と信じる。

「そんなチームがリーグワンにあってもいいでしょう」の言葉は、アイデンティティの表明でもある。

 

 毎年繰り返してきた強化プログラムに自信を持っている。「それを我々は(リーグワンのどこよりもはやい)3月にスタートさせることができています。それをアドバンテージとして最初のシーズンに挑みたいと考えています」。

 

 ストレングス。スピード・アジリティ。そしてフィットネス。あらゆる面を、専門的な力を借りて、時間をかけて高めていく。すべては、魅力的なラグビー、観る人を熱狂させ、またスタジアムに足を運びたくなるラグビーを体現するためだ。新しいホストエリア、成田の人たちの心をつかみたい。

 

 513日に日本代表キャップ25を持つエンターテイナー、山田章仁が『営業兼選手』として加入したニュースは大きな話題となった。

 人々をワクワクさせる新シーズンに向けてのニュースは、これが第一弾と考えていた方がいい。

(文・田村一博)

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