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【コラム】AZ-COM丸和MOMOTARO‘Sの現在地と未来像

AZ-COM丸和MOMOTARO’Sは、現在リーグワン参入を目指しトップイーストリーグを戦っています。

重要なシーズンとなる今季、チームを率いる細谷監督にインタビューをしました。

チーム・細谷監督の想いや戦略を知っていただければ、試合観戦がより深く、より熱く楽しめることと思います。

ぜひ、ご覧いただけますと幸いです。


ライバル関係が築かれる。

 それは、多くの人に認められる存在になった証。リスペクトしてくれる相手が伝統のあるチームなら、なおさらだ。

 

 AZ-COM丸和MOMOTARO’Sと東京ガス ブルーフレイムス。両者はお互いを、高め合う存在と認めあっている。20251018日(土)、トップイーストリーグAグループで両チームが戦った。

 それぞれにとって今季4試合目。ともに3戦全勝で迎えたその試合で勝ったのはMOMOTARO’S22-20。勝者が逆転した時間は、記録用紙に後半51分と記された。

 

 いつも競り合う両チームの対戦は、昨季(2024-25シーズン)も熱かった。1年前のリーグ戦では2回対戦して11敗。リーグ戦の最終結果は勝ち点差でMOMOTARO’S1位、東京ガスが2位となり、揃って3地域社会人リーグ順位決定トーナメント戦(今シーズンより「全国社会人ラグビーフットボール大会」に名称変更、以下全国社会人大会)へ進出する。

 そして、その舞台の決勝戦で再び顔を合わせた両者は、ファイナルにふさわしい攻防を80分続けた。勝ったのは東京ガス。MOMOTARO’S33-43敗れた。

 

 そんな背景があったから、今回の対戦にMOMOTARO’Sの選手たちは、いつも以上の気持ちを込めて臨んだ。ただ、それは相手も同じこと。先に流れをつかんだのは東京ガスだった。

(10/18東ガス戦の様子)

 先制点、追加点を得て8点を先行した相手に対し、MOMOTARO’Sは前半32分に反撃に出る。自陣10メートルラインの右ラインアウトを得ると、モールで少し前進。その時、SH高岸尚正がよく周囲を見ていた。

 左のスペースがガラ空きと見るとボールを持ち出し、そのまま50メートル超を走り切る。チームはそのまま5-8でハーフタイムに入り、後半7分には荒牧太陽のPG8-8。試合を振り出しに戻した。

 

 その後も体とプライドをぶつけ合った両チーム。ランニングタイムで後半39分過ぎに東京ガスが勝ち越しトライを挙げた時、勝敗が決したと思った観客はいたかもしれない。

 しかしMOMOTARO’S10分以上ボールを保持し続け、敵陣で戦った。セットプレーや全員が一体となったアタック、モールで圧力をかけることをやめなかった結果、レフリーはペナルティトライとジャッジする。MOMOTARO’S22-20で勝ち切った。

(勝利に歓喜する観客の方々)

 

わくわく感や熱さが伝わる試合をしたい。

開幕から4戦目にして好敵手と対峙し、つかんだ勝利は、ただ勝つことを目的としていないチームにとって意味のあるものだった。

 チームを率いる細谷直GM兼監督は、いつも選手たちに、自分たちが求めるべきものを伝えている。

(中央:細谷監督)

 つまらない勝利ならくれてやれ、とは言わないが、人の心に響くプレーをしよう。

「見る人に、わくわく感や熱さが伝わる試合をしたいですよね」

「これ、トップイーストの戦いを超えているよね」と感じてもらえたら、なおいい。91分に及んだ今回の一戦は、まさに求めているような、スリリングな展開だった。

 

 海外出身選手の個人技で挙げられたものも含み、東京ガスとの試合では3トライを許したものの、今季のMOMOTARO’Sはディフェンスがいい。

 開幕からの3試合で失ったトライは2つだけ。長い時間をかけて強化してきたセットプレーの安定が、攻守において強みを出せる基礎になっている。

 

「大勝するより、相手をロースコアに抑えて勝つ力をつける方が、(シーズン終盤の)今後につながる」と考えている細谷監督は、個々の力より、コミュケーションの密度が重要視されるディフェンスが安定していることに、歩んでいる道が正しいと確信している。

 

 2026-27年以降のリーグワン参入に正式に手を挙げたMOMOTARO’Sには、これから大きな航海に出ようとする船に乗りたい選手たちの目が集まっている。

 例えば今季開幕前には、PR東恩納寛太(グリーンロケッツ東葛から移籍)、PR五十嵐 優(豊田自動織機シャトルズ愛知から)、CTB南橋直哉(横浜キヤノンイーグルスから)、FB藤田慶和(三重ホンダヒートから)ら実績のある選手たちや、東海大出身のSH辻時羽が加わった。仏・トップ14のリヨンでプレーしていたSOフレッチャー・スミス(以前はグリーンロケッツにも所属)もそうだ。

(中央:南橋直哉)

 チームは新しい仲間たちを単なる新戦力とは考えていない。同志だ。さらなる高みを目指すチームの心意気に、自分を重ね合わせ、ともに歩くと覚悟を決めた選手たちがMOMOTARO’Sを活躍の場に選んでくれたと理解している。

 

 そんな関係性だから、日常にはチーム全員による競争がある。当然、実績のある選手たちには豊富な経験とナレッジがあり、それらはチームにとっての財産で、以前から在籍している選手たちを成長させてくれるものにもなっているが、例えば日本代表キャップを31も持つ藤田も自分の持っているものを惜しみなく周囲に伝えている。

 

 チームを貫く自分たちのスタイルについては、昨年から変わっていない。「だから、その理解度が深い、以前から在籍している選手たちが、ここまでの試合では先発に名を連ねているんです」と細谷監督が説明する。

(中央:倉掛湧生)

 

 理想的なチーム作りが進んでいる。

「新しく加わった選手たちが後半に出場して試合を支配してくれています。藤田がインパクトプレーヤーとして走り回った試合もありました。強化してきたスクラムで先発の選手たちが押し、ダメージを与えておいて、後半に五十嵐と東恩納が出る。 。相手は耐えられないですよ」

 東京ガス戦もそうだった。

(10/18東ガス戦ノーサイドの瞬間) 

新しい物語の始まり。

 

 指揮官は今季のリーグ後半戦と全国社会人大会に向け、さらなるチーム力のアップを約束する。リーグワン参入に向け、すべての人たちを納得させる実力と結果が必要と考える。

 準優勝だった「昨季以上」は当然クリアし、来季、リーグワンのディビジョン3に参入した後のことも念頭に強化を進める。

 

「(リーグワンに)上がることをゴールにはしない」とする。

「リーグワン参入が正式に決まった時、次のステージでは負け続けるかもと思われるのではなく、その時が新しい物語の始まり、と感じてもらうチーム力を持ちたいと思っています。わくわくしてもらえるチームになります」

 

 突飛な仕掛けでチャレンジングなプレーを出し続けたいわけではない。それではリーグワンでは戦っていけない。

 あくまで幹を太くして、創造的なラグビーで勝つことを目指す。ピッチに立つ選手たちのコミュニケーションを密にして、それぞれが強みを出し、それがつながっていくイメージだ。

 

 セットプレーやディフェンスの強化が進んだことで、防御からの切り返しを起点にした攻め、敵陣への入り方の整備、ゴール前でのパワーと、勝利へ近づくための土台作りは進んでいる。

 

「そうなると、こういう状況ならこう攻めるだろう、こう仕留めるだろうというものが、観る人たちにもイメージできるようになっていると思います。目指しているのは、その先です。そうやって戦うこともできるんだけど、そこで見ている人の想像を超える判断、プレーを出して勝ちたい」

 見て楽しい。勝って嬉しい。その両方を追い求める。

 

 もともとあるチームのスピリットに新しい風を吹かせる選手たちも加わって、MOMOTARO’Sのカルチャーもできつつある。

「地域の人たちに、地元にラグビーのチームがあると、こんなにハッピーなことがあるんだね、と思ってもらえるチームになることを目指しています。そこに暮らす人たちが、豊かな生活を送れるようにするための一助になりたい」

 

 全員がそういうビジョンを持てているから、試合週の月曜日に出場メンバーが発表され、そこに名前がなかった選手も下を向かない。

 ピッチに立てない悔しさはあっても、一人ひとりにはクラブが目指すところに向かうためにやるべきことがある。自ら、それに取り組める選手たちが集まったチームになってきている。

 今季のトップイーストリーグAグループは、126日に秩父宮ラグビー場でおこなわれる東京ガス戦まで続き、そのあと、全国社会人大会が待っている。

 1月末のリーグワン参入チーム正式決定の報を全国社会人大会チャンピオンとして受けるのは当然、長く待っていた吉報を、一緒に喜んでくれる人たちを一人でも多くしたい。

 それを実現するため、魅力あるラグビーと活動を発信し続ける。

(文・田村一博)

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