ピンクのシャツは、遠くからでもよく分かる。外苑前駅からスタジアムへ続く道に、お揃いの服を着た多くのMOMOTARO’Sファンの姿があった。

12月6日の秩父宮ラグビー場のスタンドではピンクの小旗も振られた。2026-27シーズンは、リーグワンで同じような光景を見たい。そう思っている人は多かった。
そのためにも負けられない試合だった。同日、トップイーストリーグAグループの2025年度シーズン最終戦、AZ-COM丸和MOMOTARO’S×東京ガス ブルーフレイムスがおこなわれた。結果は32-10。MOMOTARO’Sが快勝して同リーグ優勝を決めた。
試合前も、試合中もノーサイド後も、MOMOTARO’Sのファンは楽しそうだった。選手たちはその応援に力をもらい、関東、関西、九州の上位3チームずつが出場して戦う全国社会人ラグビーフットボールトーナメント大会(1月24日、25日まで続く)を勝ち抜くエナジーを得た。
10月18日の今季1回目の対戦時は22-20。互いにライバル心を燃やす東京ガスとの戦いは、この日も熱を帯びていた。前半を終えて15-7。後半20分過ぎまで15-10だった。
そこから2トライ2ゴール、1ペナルティゴールで粘る相手を突き放した。1か月半前の2点差が22点差となったのは、シーズン中にも成長した証と言っていい。
この日のMOMOTARO’Sは前に出る意志を表に出し続けた。それはキックオフ直後から観る者に伝わった。

自陣での相手ボールスクラムから攻められた試合の入りで、しつこく、ハードに守ってボールを取り返した後、ボールを簡単に外に蹴り出さず、トライライン前から攻め、前に出た姿勢からアグレッシブさが伝わった。
先制点は前半13分。FBリコ・サイムがスクラムからのアタックを仕上げた。相手のタックルを受けて一度は倒れながらも、すぐに立ち上がり、走り切った。その直前、SOフレッチャー・スミスが上げたキックをWTB坂井裕生がチェイス、そしてコンテスト。地面に跳ねたボールを全員で前に運び、得たチャンスをしっかり得点に変えた。
22分の追加点は、先制点の前に好チェイスを見せた坂井が挙げた。相手のワイド攻撃を止め続け、攻め手を消して蹴らせたキックのレシーブから攻撃は始まった。
自陣でボールを手にしたMOMOTARO’Sの選手たちは、すぐにアタックの陣形を整えて左に展開する。好ステップで相手防御を惑わせたFBサイムからパスを受けたWTB坂井は左サイドでスピード、ステップ、そして強さを見せて前へ。サポートに走ったサイムにパスしても動きを止めず、最後はリターンパスを受けてトライラインを越えた。SOスミスのゴールキックも決まり、スコアは12-0となった。
ただ、相手もさすがライバル。これくらいの点差で心は折れない。前半31分にはラインアウトからのサインプレーで前進し、PR春野星翔がインゴールにボールをねじ込む。同32分にPGで再び差を広げられても後半13分にPGを返す(15-10)。僅差のまま終盤を迎えた。
◆全員が輝いていた。
勝負の天秤が大きくMOMOTARO’Sの方に傾いたのは、後半23分にPGを決め、18-10とした後の同34分だった。東京ガスの反則からPKで前進。ラインアウト→モールから前に出た選手たちは左に展開した。
この時のSOスミスの動きが素晴らしかった。背番号10はピッチ中央で相手のタックルを受けるも、すぐに立ち上がり、攻めるスペースのある左サイドへ走る。スミスは左で待つWTB坂井にロングパス。坂井は得意のステップでディフェンダーをかわして走り、FBサイムにラストパス。トライは、そうやって生まれた(スミスのゴールも決まり25-10)。

写真中央:フレッチャー・スミス
SOスミスは39分にもインターセプトからトライを追加、ゴールも決める活躍で、プレーヤー・オブ・ザ・マッチにも選ばれた。ひとりで17得点を挙げた。
スコア表にはSOスミスやFBサイムの名が並んだ試合。しかし、80分を見つめたファンは知っている。得点者は仕事人たちの働きをスコアに変えるパフォーマンスを出した。他の選手たちがそれぞれの役目を果たしたから勝利をつかめた。

写真中央:リコ・サイム
例えばNO8の鎌田凌。175センチ、105キロとがっしりした体躯ながらよく動き、攻守で前に出た。相手5番のセコナイア・ブルは192センチ、120キロ。豪快なボールキャリーを何度も見せたその大男に体を当て続け、時には跳ね飛ばされても何度も立ち向かった。「みんなでカバーし合って、いいディフェンスができた」と試合後、いい表情をしていた。

写真中央:鎌田凌
SH高岸尚正の元気もチームを躍動させた。強気な動きとテンポのいい球捌きのバランスがいい。12番・南橋直哉の攻守の鋭さはいつも通りで、13番の川井太貴は強さとスティールなど球際の粘りでチームに貢献した。WTB堀井雄登も献身的にキックボールを追い、体を張り続けた。
釜谷慎司、松田大空、神田剛のフロントローは奮闘した後、後半10分、それぞれ五十嵐優、木津武士、東恩納寛太にバトンを渡した。叩き上げの3人から、実績のあるベテラン勢へ。単なる入替ではなく、絆が感じられる布陣変更と感じた人もいたのではないか。16番、17番、18番の背中から、「任せとけ」のメッセージが発信されている気がした。
全員で戦う。
そんなスピリットを前面に押し出して戦うチームは少なくないが、この日のMOMOTARO’Sからは、その精神を強く感じた。前述のフロントローの入替だけでなく、各ポジションで、途中出場の選手たちが強いインパクトを残した。
◆MOMOTARO’S育ち。
印象深かったのが南橋に代わり、後半19分からピッチに入った藤高将だ。背番号22の28歳は、入替前の後半開始直後、南橋の出血による一時出場時から体を張って迷いのないタックルを何度も見せた。

写真右側:藤高将
細谷直GM兼監督は、「相手はアタック力があるチーム。なので、ディフェンスを中心にゲームを組み立てる、リズムを作ることを考えました」とし、その思いがあったからこそ、残り20分弱まで5点差の試合を勝ち切れたし、最後の最後に突き放せたと話した。
「選手たちがプランを遂行し、規律を守ってプレーしてくれたことに感謝します」

試合後記者会見時の眞野主将と細谷GM兼監督
眞野拓也主将は「チームは春から2冠、リーグ戦優勝と、次の全国社会人ラグビーフットボールトーナメント大会での優勝を目指してやってきました」と話した後、そのためにも、この日の試合に勝つのが大事だったと続けた。
「東京ガスさんとの試合は毎回、すごくタイトなゲームになると分かっていました。なので、自分たちがやってきたことをやり切ろう、と。全員が同じページ、同じ絵、同じ方向を向いてプレーできたのが勝因と思います」
この先もシーズンは続く。同じように戦う。
2人はこの日のチームのパフォーマンスを見て、前日のノンメンバーによる試合を思い出したという。リーグワンのディビジョン2で戦うNECグリーンロケッツ東葛と、Bチーム同士で戦った。

NECグリーンロケッツ東葛との練習試合の様子
「その時のディフェンスが凄かった。きょうの試合のメンバーもそれを見ていました。今朝、前日の映像の一部をクリップしたものを用意して、試合メンバーに『こんなディフェンスをしよう』と言ったんです。本当に、デジャヴのような試合でした」
MOMOTARO’Sでは試合への出場登録外の選手たちのことをエナジーメンバーと呼ぶ。実際に前日の試合に出た選手たちは、東京ガスに挑んだ者たちに熱を注ぎ込んでみせた。この日の勝利はピッチの23人だけでなく、クラブ全体でつかんだものだった。
手にしたい2冠のうちの一つを手に入れ、2つめのタイトルである全国社会人ラグビーフットボールトーナメント大会での優勝に歩を進めた。
その次の山を登り切るためには実力のさらなるブラッシュアップ、そして集中力と結束を高めないといけないことは分かっているから、チームに気の緩みは一切ない。その先にはリーグワン参入という今季の最終目標もあるのだから、さらなる高みへ進み続けるのは当然のこと。細谷監督は「今季最初の試合ではモールで押せていたのに、きょうは、そこまで優位に立てなかった。そういう点も含め、やるべきことをさらにやり続けます」と気を引き締める。
リーグワンの扉を開く時は近づいている。チームが時間をかけてやってきた環境面や活動状況、地域とのコネクションについてはリーグ側から評価を得ている(一次審査をクリア)。参入決定への最後のピースは、今季残す結果。全国社会人ラグビーフットボールトーナメント大会での優勝が必須条件なのか否かは明確になっていないが、細谷監督は「昨年以上(全国準優勝)の結果を残す。それを我々の中での絶対条件にしています」と言う。
眞野主将は、シーズン中にもチーム力が高まっていることを実感しているから、まだまだ成長していけると思っている。
「例えばウイングの坂井。シーズン序盤はメンバーに入れなかった選手です。でもコツコツ努力して、きょうはスピードのあるところや、いい走りを見せてくれた。そういうの、本当に嬉しいですね」

坂井裕生のトライ
細谷監督も、生え抜きの選手や若い選手が成長しているところに、このチームの未来があると考えている。
「リーグワンから(実績のある)選手が入ってきて急に強くなったと思われているかもしれませんが、そうではない。こんなチームが一つぐらいあってもいいかな、と思っています」
ただリーグワンに行きたいと言うのではなく、多くの人たちに歓迎されるチームだと証明するための日々は続く。

(文・田村一博)


